「もっとやりたい!」と自分から言ったのはこれが初めてだった。
それからハルは、毎週としT先生のオンラインレッスンが楽しみになった。
最初は簡単なメロディーを作るだけだったが、だんだんと音楽にはリズムやハーモニーというものが組み合わさっていることを知るようになって、いろいろと組み合わせを変えたりと工夫しはじめた。
「ハルちゃん、この音の間をもう少し長くすると雰囲気が変わるんじゃない?。試してみて!」
「先生、この音符とこの音符を繋げたら、もっと面白くなるかな?」
「いいね!その発想、大事だよ!」
としTは、ハルのやることを「へ~」とか「おもしろい!」とか反応してくれて、ハルがどんな質問をしても丁寧に答えてくれた。
ハルは自分のアイデアを形にする楽しさを知り、少しずつ自信を深めていった。ハルは、自分が作った曲を両親に聴かせた。「これ、ハルが作ったの?」と驚くパパと、「すごい!才能あるのかも!」と目を輝かせるママ。
両親の反応に、ハルは初めて自分の中にある「何か」を感じ始めた。
ある時、ハルは父親の誕生日に特別な曲を作ることを思いついた。「パパが好きそうな明るい曲にしたいな…」と、としT先生に相談すると、「いいね!ハッピーバースデーソングをハルちゃんのイメージにして作ろう。」
「明るい音の感じってどんなだろうか?」とアドバイスをもらって、自分なりに明るいを考えながら進めていった。
としT先生の話でコードというものがあって、その響きの違いで音楽に雰囲気が出ることを知った。
誕生日当日、家族の前で、ちょっとドキドキしながらハルが作ったマイクラを披露した。
パパは目を丸くして驚き「こんなの見たことないよ、ありがとう!」と涙目、ママも「すごい!ハルがこんなことできるなんて!」と感動の声をあげた。ハルは照れながらも、「やって良かった!」と初めて心の底から思えた。自分がはじめに思っていた音楽というものが別世界に見えた。思っていることは一つではないことを感じ始めていた。「いろいろと知りたい。」
そして、もっと他の違った音楽にも興味が出てきていた。
としT先生が言っていた「音楽って奥が深くて答えはないんよ」という言葉がグッと刺さってきていた。